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大学についての話題で最近注目されているのが、「国際卓越研究大学」。
これは新しい大学ではなく、簡単に言うと「世界トップクラスの研究設備・環境がある大学」として認定される大学。
2023年5月現在はどの大学が国際卓越研究大学とは決まっておらず、候補の10大学が出ている状況。ここからさらに絞り込まれ、数校が国際卓越研究大学として指定されます。
国際卓越研究大学となる大学は何が変わるのか、高校生・受験生にとってメリットはあるのかを解説します。
世界の大学と比べての、日本における大学研究の現状
日本にも良い大学はたくさんあり、東大・京大を始めとする旧帝大、早稲田・慶応などを挙げる人は多いです。
ただ、これはあくまでも「日本国内」の話。世界まで目を向けると、日本の大学の立ち位置が違って見えます。
文部科学省の「科学技術指標2022」という分析調査を元に、日本の大学における研究環境を考えてみます。
【国別の論文数ランキングTOP10】
参考:文部科学省・科学技術指標2022「研究活動の国別比較」
順位 | 2008〜2010年 | 2018〜2020年 | ||
---|---|---|---|---|
国 | 論文数 | 国 | 論文数 | |
1 | アメリカ | 297,349 | 中国 | 466,410 |
2 | 中国 | 122,768 | アメリカ | 398,859 |
3 | ドイツ | 82,417 | イギリス | 121,494 |
4 | イギリス | 79,352 | ドイツ | 114,320 |
5 | 日本 | 75,415 | 日本 | 86,317 |
6 | フランス | 60,908 | インド | 82,731 |
7 | イタリア | 48,970 | イタリア | 78,532 |
8 | カナダ | 48,717 | フランス | 77,529 |
9 | スペイン | 39,870 | カナダ | 72,223 |
10 | インド | 39,524 | オーストラリア | 68,163 |
論文数で見ると、日本は2020年の時点で5位。ただ、2008〜2010年のデータから中国は3倍以上、アメリカは1.3倍ほど増えており、これに比べると日本の伸び率は低め。また、インドも2倍以上の論文数が伸びていて、ほかの国も競争に加わってきています。
【大学の研究開発費】
参考:文部科学省・科学技術指標2022「大学部門の研究開発費」
大学の研究開発費を見てみると、日本は一応増えているものの、かなり緩やかです。これに対してEU・アメリカ・中国は大きく伸びていて、2000年台の初めに比べて差が広がりました。日本は中国に途中で抜かれていることもわかります。
この2つのデータから、「日本の大学研究は世界に比べて、競争力が落ちてきている」といえます。海外の大学は国から資金の支援があり、それを元に研究環境を充実。最先端の研究ができ、優秀な研究者・エンジニアなどを輩出しています。日本は現状、海外の研究に力を入れている国に比べると、大学研究に費用を配分できていません。
【大学院で取れる「博士号」取得者の推移】
参考:文部科学省・科学技術指標2022「学位取得者の国際比較」
大学を卒業した人は企業へ就職するイメージがあると思いますが、理系では大学院へ進む人も多いです。
大学院は
- 2年間の研究活動・論文発表を行う「修士過程(修士号・マスター)」
- 4年間の研究活動・論文発表を行う「博士課程(博士号・ドクター)」
に分かれ、どちらかを選べます。
博士号のほうが良さそうに思えますが、大学で4年間、さらに大学院の博士課程で4年間を過ごすと、現役で大学に入学しても26歳で大学院を卒業となり、年齢的にかなり高くなります。そのため24歳で卒業となる修士のほうが人気があり、企業も理系人材は修士課程を修了した人を多く採用しています。
日本で博士課程を卒業した人は「専門性は高いけれど、年齢が高いため就職には不利」という、せっかく大学で研究を頑張ってもメリットが薄い状況となっているのです。
上のデータを見ると、アメリカ・ドイツ・フランス・イギリス・韓国は、日本の2倍以上の博士号取得者がいるとわかります。
世界的に見ると、やはり高度な専門性がある博士号人材は必要とされていて、今後は日本もこの流れが来ると予想されます。国も博士号をもつ人材が少ない今の状況に危機感をもっていて、国際卓越研究大学が指定されることになりました。
「国際卓越研究大学」とは、世界最高水準の研究環境で、世界に通用する人材が集まる大学
国際卓越研究大学はシンプルにいうと、「最高の研究環境があり、最高の人材が集まる大学」というイメージ。2023年5月現在は、まだ「どの大学が国際卓越研究大学である」とは決まっておらず、これから決定されます。
【国際卓越研究大学(卓越大学・卓越大)の特徴・メリット】
- 卓越大に認定される大学は、世界最高水準の研究環境があり、世界トップクラスの人材が集まり、輩出する。
- 卓越大で行われる研究は、展開されることで社会に大きなプラスの影響が見込める。
- 卓越大に認定される大学の学生は、授業料の免除や生活費の支給を受けられ、最高の環境で学問・研究に打ち込める。
- 卓越大の学生は博士号も当然取れる。
- 卓越大に認定される大学には、国から資金の支援がある。10兆円規模で国が資金を用意して、このお金を株式投資などに回して年3,000億円の利益を目指す(「大学ファンド」という)。この運用による利益を、卓越大に配分。
- 卓越大に認定される大学は「年に3%の事業成長」「独自基金の創設」「数十年にわたり改革を保つ体制」が求められる。変革の方向性や方法、大学のポテンシャルも重視。
つまり「最先端の研究や世界に通用する研究がしたい」という高校生・受験生にとって、卓越大に認定される大学は良い選択肢。また、修士・博士を卒業して企業へ就職するときも、非常に大きなチャンス・可能性が広がると考えられます。
卓越大に籍を置く教授やスタッフも国から支援があることで安定した研究活動・仕事ができますが、世界の最先端に通用する研究・仕事をする必要があると考えられ、競争は厳しいはずです。
国際卓越研究大学に配られる資金は、「大学ファンド」の運用による利益
大学に最高の研究設備・教授・学習環境を整え、今後もアップデートするには、大きなお金が必要。「そのお金をどう用意するか」の答として、国は「大学ファンドを作る」ということを解決の手段としています。
10兆円をそのまま大学に配るとゼロになったら終わりですが、10兆円の運用を通して得られる利益を大学に配分すれば、継続して支援を続けられるというわけです。
運用益は年間3,000億円(10兆円の3%)が見込まれていて、たとえば卓越大として5つの大学が認定されると、単純計算で1大学につき600億円が支援される計算。もちろん卓越大の中でも研究の成果などにより、配分額は変わると予想されます。
2023年5月現在、国際卓越研究大学は10大学が候補に
文部科学省は国際卓越研究大学となる大学を募集、2023年4月に10大学が候補となり、公表されました。
この10大学が国際卓越研究大学というわけではなく、ここからさらに絞られ、数校が認定される予定となっています。
【国際卓越研究大学の候補10校(2023年5月現在)】
国公立 | 私立 |
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※東京科学大学は東工大(東京工業大学)と東京医科歯科大学が2024年中に統合してできる、新しい大学。
(参考)東京科学大学が誕生予定!なぜ設立されるか、入試の難易度は?
これまでトップレベルの大学といえば、東大・京大・阪大・一橋・東工大・旧帝大(北大・東北大・名大・九大)・早慶などを指すのが一般的でしたが、これらの上に、「卓越大」というグループができると予想されます。
また、卓越大の候補に慶応大学が入っていないのは意外であり、かわりに東京理科大学が候補に入っています。ただし東京理科大学も理系の大学として人気で先端的な研究を行っているため、納得できる面はあります。
偏差値や入試がどうなるかは、まだ未定。人気が高まる可能性はあり、候補の10大学は要注目
2023年5月現在、卓越大の偏差値ランキングや入試がどうなるかは、まだ未定となっています。ただ、認定の大学が正式に決まったら、その大学の人気は高まる可能性が十分あります。
たとえば東北大が卓越大に選ばれた場合、「北大を目指そうと思っていたけど、東北大にしよう」という人が出てくると予想されるため、これまでと変わらず「早めの情報収集と受験勉強のスタート」がポイントになりそうです。
どの大学が卓越大として認定されるのか、認定された大学がどうなっていくのか、入試がどうなるのかは、今後も要注目といえます。
国際卓越研究大学は、新しい時代に合わせた最先端の大学群。ベストな研究環境で勉強・研究をしたいなら、考えてみるのもおすすめ
国際卓越研究大学は国内にある大学の現状を踏まえて、世界で最先端の研究環境を作るために設立される大学群。どの大学が認定されるかはまだ決まっていませんが、今の高校生・受験生にとっては注目度の高い大学になると考えられます。
また、当たり前ですが、「卓越大に入りさえすれば安心」というわけではなく、入学後からが本当のスタート。自分が興味のある分野を見極めて、今後さらに充実すると思われる研究環境を最大限に活かして、思う存分活動してほしいと思います。それが自分自身のためでもあり、結果として日本全体にも役立つものになるはずです。